遺言 について
1 遺言能力について
法律(民法)上は、「15歳に達した者は、遺言をすることができる。」(=遺言能力)とされていますので、遺言者が15歳以上であれば、遺言書を作成することができます。
もっとも、遺言者が自分自身で遺言の内容を理解できていることが前提となります。
したがって、たとえ15歳以上であっても、例えば重度の認知症等を患っており、本人が遺言の内容を理解できない(意思能力がない)状況で作成した遺言書については効力が認められません。
また、遺言者が15歳未満の場合には、本人がいくらしっかりした方であっても、また仮にご両親等法定代理人の同意があった場合でも、遺言をすることはできません。
なお、成年被後見人や15歳以上の未成年者が遺言をする場合には、遺言の方法等に一部制限があるので注意が必要です。
自分の家族に宛てて書き残したい内容は、時間の経過とともに変わっていくので、遺言書を書くのはもっと高齢になってからでいい、とお考えの方も多くいらっしゃいます。
しかし、先ほどのように、自身が重度の認知症等を患ってしまった場合、以降有効な遺言を残すことが出来なくなってしまう可能性もあります。
遺言はいつでも撤回して書き直すことができます。
将来自分の身に起こることは誰にも分かりませんから、「まだ大丈夫、まだ大丈夫」ではなく、今のうちにあらかじめ遺言を用意しておくのもいいのかもしれません。
遺言に記載する詳しい内容等につきましては、弁護士等の専門家にご相談ください。
当法人の行政書士に遺言についてご相談希望の旨お伝えいただければ、弁護士等と連携のうえ、引き継ぎをさせていただきますので、お気軽にお申しつけください。
2 遺言の形式
⑴ 自筆証書遺言
その名の通り、遺言の内容を自筆で作成する遺言書のことを、自筆証書遺言といいます。
遺言書と聞いていちばん最初に思い浮かぶパターンはこちらかもしれません。
以前は遺言書の全文、日付および氏名を自書する必要があったため、たくさん財産をお持ちの方が、遺言書に財産目録(相続財産の全部または一部の目録)を添付する際、これらをすべて手書きで列挙するのに苦労される場合もありましたが、平成31年1月13日より、自筆証書遺言に添付する目録についてはパソコンで作成したものでも有効と認められるようになりました。
【参考】法務省ホームページ「自筆証書遺言に関するルールが変わります。」
自筆証書遺言のメリットは、費用をかけずに作成できるところです。
反対にデメリットは、日付の記入や押印等、要件を満たしていないと、せっかく書き残したにもかかわらず遺言が無効になるおそれがある点です。
なお、以前は、遺言の偽造等の危険がある点がもう一つの大きなデメリットでしたが、令和2年7月より、自筆証書遺言を法務局で保管できるようになりましたので、この制度を利用することで、遺言の偽造等のおそれがなくなり安心です。
自筆証書遺言は、法務局で保管されているものを除き、遺言者が亡くなった後、家庭裁判所において検認の手続きを経る必要がありますので、その点も、相続人にとって負担になるかもしれません。
⑵ 公正証書遺言
次に、公証役場で遺言内容を口授して作成する公正証書遺言という形式があります。
公正証書遺言は、公証人がしっかりと内容を確認するため、基本的には形式面で遺言が無効になる心配はないと言ってよいでしょう。
また、完成した遺言書の原本は公証役場で保管されるため、偽造や破棄の心配もありません。
さらに、公正証書遺言は検認の手続きも不要です。
反対に公正証書遺言のデメリットは、自筆証書遺言に比べると、作成に時間や費用がかかるところです。すなわち、自筆証書遺言は自分ひとりで書けば終わるところ、公正証書遺言は公証役場に行って公証人と内容の打ち合わせをしたり、手数料を支払ったりする必要があります。
⑶ 秘密証書遺言
3つめの形式として、秘密証書遺言というものがあります。
これは、遺言を自分で書いて(遺言の本文は自筆でもパソコンでも、どちらでも構いません)公証役場に持参し、自分の遺言であることを公証人および2人以上の証人に証明してもらうものです。
その名の通り遺言の内容を秘密にすることができますが、公証役場に持ち込みますので、遺言の存在自体はわかってしまいます。
秘密証書遺言は封印をするため、自筆証書遺言に比べて偽造されるおそれがないことがメリットと言われますが、現在では自筆証書遺言を法務局で保管することもできますので、秘密証書遺言を作成するメリットは薄いと言えます。
また、秘密証書遺言は、遺言の存在を証明してもらうためだけに手数料が発生してしまうことや、遺言者が亡くなった後に家庭裁判所の検認が必要となる点もあり、実際にはほぼ作成されていません。
以上の3つの形式のうち、ご家族に残したい内容によってどういった遺言を書くかは変わってくるかと思います。
遺言についてお考えの方は、ぜひ専門家へご相談ください。
3 公正証書遺言の調べ方
遺言書があるかどうかによって、相続財産の分け方や、相続財産の承継手続きの方法等が変わってきますので、相続手続きを適切に行うためには、亡くなられた方(被相続人)が生前に遺言書を残していたかどうかを調べる必要があります。
ここでは、公正証書遺言書の調べ方についてご説明します。
昭和64年1月1日以降に作成された公正証書遺言については、全国の公証役場で遺言検索システムを利用することで、遺言の有無を調べることができます。
【参考】
※昭和通り公証役場ホームページ 「ご存じですか?遺言検索システム。(再掲載)」
※神戸公証役場ホームページ 「遺言検索」
亡くなられた方の相続人や利害関係人、またはその代理人が、遺言の調査を行うことができます。
なお、被相続人がご存命の間は、被相続人ご本人しか調査することはできません。
たとえご家族であっても、被相続人ご本人がご存命の間は、遺言書について調査できませんので、ご注意ください。
遺言検索システムを利用するためには、
①被相続人が亡くなったことがわかる資料(死亡の記載がある戸籍謄本等)
②被相続人との関係がわかる資料(相続人の場合、相続人であることがわかる戸籍謄本等)
③調査を行う方の身分証明書(運転免許証等)
等が必要になりますので、事前にご用意いただき、公証役場に持参してください。
遺言検索システムは、全国どこの公証役場でも利用できます。
ただし、遺言検索システムでは、遺言の有無と、作成された公証役場がわかるのみで、その内容までは判明しないため、実際に内容を確認するためには、作成された公証役場へ行く必要があります。
なお、名古屋市内には、
があります。
このように、公正証書遺言を探すには戸籍等の書類を集めたりする手間がかかりますし、そもそも平日に公証役場へ行くのは難しい、という方も多いかもしれません。
名古屋市内やあるいはそのお近くにお住まいの方で、遺言書の有無について調べたいという方がいらっしゃいましたら、当法人の行政書士にお気軽にご相談ください。
4 自筆証書遺言の調べ方
自筆証書遺言は、公正証書遺言と異なり、遺言検索システムといったものがないため、遺言書が保管されていそうな場所を自分で探してみる必要があります。
ご自宅内であれば、タンスや金庫、仏壇の引き出し等、まだ心当たりのある場所を探しやすいかもしれませんが、銀行の貸金庫等に保管されている場合も考えられます。
また、令和2年7月10日より、自筆証書遺言を法務局で保管する制度も始まりましたので、遺言書の有無を調べる際はご留意ください。
※東京法務局ホームページ 「自筆証書遺言書保管制度」について
なお、自宅内や貸金庫等で自筆証書遺言が見つかった場合には、家庭裁判所で検認手続きをとる必要もありますので、あわせて確認が必要といえるでしょう。